2009年12月18日

用務員だより 5-2

 (■http://wakatake.ti-da.net/ よりつづく)

男の中にはズボンを下ろしてからおもむろに用を足す人がいるが、
クレヨンもそう。ヤツは女トイレで用を足していたのだ。

ついこないだ、アノ声の原因はクレヨンだったのではとハタと気付き、
問い詰めてみた。
「○○さんのトイレを開けたのは君だったのか」
「・・・・・・・・」
「君だったんだろう」
「イッヒッヒッヒ・・・」
「やはり君か。○○さんのお尻が見たかったのか」
「ミタクナカッタ!」
「見たくないものを見てしまったのか」
「ミタクナカッタ、ミタクナカッタ~」
「そうか、かわいそうに!」
「○バル○コサン、ゴメンナサイ、ゴメンナサ~イ・・・」
と言いつつ、顔は笑っていた。

その日、お茶タイムついでに今までのことを謝りに行こうと
陶芸室にいたキャンディーの前にヤツを連れ出した。
が、モジモジして謝れない。何度も試みるがダメ。
傍らまで行ってはニヤニヤして引き返してくる。

それを見ていた小梅ちゃんが、どうしたの?と聞いてきたので、
事の真相を話したら、小梅ちゃんは「キャンディーちゃんのお尻
がきっとクレヨンのトラウマになっている!」とでも思ったのか、
自分の可愛いお尻でそれを帳消しにしてやろうと
「私と一緒にトイレに行こう、ハイ、一緒に行こう・・・」
とからかってきた。だが、ヤツは黙ったままだった。

最近ツーカーになったヤツの言葉を翻訳してみると、
「コノ人、ナニイッテンノ 影丸さん カワリニ行ッテアゲロ」
「俺が替わりに行くのか。ヤダ、まずいんじゃないの」
「イイカラ オラガユルスデ イッテコイ」
「・・・・・OK」
とはなったが、もう少し若ければ乗れたかもしれないが、
ご高齢の俺なれば、小梅ちゃんには言えなかったもんね~。

先日、赤土を探しに南城市に出かけた。クレヨンと両津勘吉と3人で
親ケ原の公園でトイレタイム。一休みついでに久々にかくれんぼをした。
隠れてるやつらを探そうとあちこち歩いていたら、いきなりクレヨンの
ハックション!がこだまして、それでオジャンになってしまった。
二人だけでやるわけにもいかず、その場であっけなく終了よ。
大バカ者めが!遊びをわきまえろだ。かくれんぼもなにもありゃしない。
ヤツはかくれんぼが大のニガテ。ニガテどころか、鬼しかできない!

思えばクレヨンのヤツ、夏でも頻繁にクシャミしてやがった。
予告もなく突然ハックション!をやるものだから、俺など何度ヤツの
ヨダレの洗礼を受けたか知れやしない。人の分までクシャンでやがる。
俺の一年分を一週間ほどでやっちゃう。それほど頻繁。
フーテンの寅さん風に言えば
「早い話が、オレが芋を食って、おまえが屁をするか?」
ってなもんで、人の分まで合わせたクシャミ一年分を一つのディスクに
連続でつなげると2時間をゆうに満杯にするかも知んない。
ハックション!ハックション!ハックション!ハックション!・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ハクション大魔王が近くにいて、これから寒くなるのが恐ろしい!

■4月2日の初出勤の日、園芸ハウスに着くといきなりデコダンスの
洗礼を受けてしまい、自問自答する間もなく、今度はカールおじさん
の提供コマーシャルの実況を聞かされ、俺はどんなところに来てしま
ったんだ?とカルチャーショックに見舞われたのを覚えている。

この二人、ライルのようにどこか自分勝手。いや、自分勝手というより
ほとんど人のことなど眼中にない。他人に媚びず我が道を行くから
まったく男惚れするヤツだ。それ故、いつも二人のおかしな行動には
自然と注目せざるを得なかった。

さもありなん。ヤツラの演じる行動や一つ一つの笑いが倍加され、
増幅さてしまうのも、別の次元で遊んでいるのを誰かに邪魔され、
現実に引き戻された時の戸惑いのアノ表情が面白いからだ。

■今回の主役はデコチン。そのデコ、帰りにはいつもパンを買いに
サマサマに立ち寄るようだが、先日初めてソノ不思議な光景に遭遇した。
パンを買うと支払いをするが、その金を渡す迄に長~い時間が掛かるのだ。
それを受け取るカーチャも毎度のことで、5秒・・10秒・・15秒・・・
とニヤケながら待ってるという、なかなか見応えのある光景があった。
厳粛な儀式を行う二人を前に、面玉が飛び出すほどに釘付けになり、
すっかり笑いを忘れ見入ってしまった。「お目出とう」に文字通りの
もう一つの意味があることを初めて知ったかも知れぬ。
次元を介して対話する二人。ココで笑えるヤツは、カーチャのように
毎度の人か、その場の空気が読めない人だけ。
   

            用務員だより 5-2


利用者にしては不思議なことに、ヤツは帰むき出しの斜面になり、
立ち入り禁止区域ではあるが、歩こうと思えば人が歩けるまでになった。
デコはそこを新しい帰り道にした。

とある日、斜面をデコが下っていくのを目にした。すぐに見えなく
なったが、窪地なのでまたちゃんと姿を現すことは分かっていた。
そこで、ヤツが見えなくなった瞬間、やんちゃ心で「転べ、コロベ!」
とマジナイをかけてみた。

そして次に視界に現れたヤツを見て、一人抱腹絶倒してしまった。
ズボンのお尻に泥がペッタンコ。手にもペッタリ。そう、転んだのだ。
奇しくも俺の見えないところで急斜面を駆け下り、止めるに止められず
雨上がりの泥にスッテンコロリンだ。

そのオシリと手から見て、スピードは若干10km。最大瞬間15km。
あと5kmスピードが出てたら全身泥だらけで、俺もあのカナ 網を越え
助けに馳せ参じなきゃならなかったろう。
ヤツのオッタまげたソノ顔を想像するだけでたまらんね~。
なっ、笑いが増幅されるだろ。倍化されるだろ。たまらんね~。
好き。大好き。ウッヒッヒッヒ・・・・。

俺のマジナイもなかなかのものよの~。
屏風の裏から糸を引き、操っているような快感。
人の秘密を覗いてしまったようなこの上ない快感。
人の不幸は蜜の味。ザマ~ミロだ。

その後、オシリの泥がぬぐいきれないと諦めて歩き出したデコは、
もうスッテンコロリンことなどすっかり忘れ、療育園のいつもの場所で
何事もなかったようにバッグからパンを取り出し、
俺が見ているとはつゆ知らず、歩きながらビニールをはがし捨て、
パンを食いながら、時おりデコダンスを踊りながら、
鏡が丘養護学校のスロープの道を今日も一人、
誰にもサヨナラも言わずに、西日を浴びてルンルン気分で帰って行った。

満腹感を味わわせて貰った俺は、ヤツの後姿が小さく見えなくなるまで
歌を口ずさみながら見送り、児童デイの送迎へと向ったのでありました。

 ♪~ 乾いた空に続く坂道 後姿が小さくなる~
    優しい言葉探せないまま 冷えたその手を振り続けた ♪~

                                       (影 虎)


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Posted by やぶれがさ at 13:26│Comments(0)缶集めの日常
 
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